退職金を増やす前に「税金封筒」を作るという、地味すぎる老後資金の守り方

2026年4月から在職老齢年金の基準額は、賃金と老齢厚生年金の合計で月51万円から月65万円へ引き上げられました。働きながら年金を受け取りやすくなった一方で、60代の資産形成は「増やすこと」より「急に減らさないこと」が大切になっています。(参考・・・年金機構)
また、退職金向けの高金利プランも注目されていますが、All Aboutでも紹介されている通り、元本割れリスクのない定期預金のみの退職金プランを選ぶ視点も重要です。(参考・・・All About(オールアバウト)
5月16日、財布に静かに届く“老後の現実”
5月も半ばになりますと、庭の緑が濃くなり、スーパーには新茶や初夏の野菜が並びます。気持ちのよい季節です。
ところが、郵便受けにはあまり気持ちよくない封筒も届きます。
固定資産税、自動車税、保険料、町内会費。
どれも人生を壊すほどの金額ではありません。けれど、年金生活に入ると、この「たまに来る支払い」が妙に重たく感じます。
退職金を受け取った直後は、通帳の残高が大きく見えます。
「少しくらい投資してもいいか」
「NISAで配当株を買ってみようか」
「銀行の退職金プランも見てみようか」
そう考えるのは自然です。
ただ、60代の資産形成で本当に怖いのは、株価の下落だけではありません。
もっと地味で、もっと生活に近いところにあります。
それは、毎年必ず来る支払いを、退職金の中から何となく払ってしまうことです。
最初は数万円。
次も数万円。
車検で十数万円。
家電の買い替えで二十万円。
孫へのお祝い、親戚づきあい、法事、病院代。
気づけば、投資で負けたわけでもないのに、退職金が静かに減っています。
これが、私が今回選んだニッチなテーマです。
「退職金を投資する前に、税金封筒を作る」
なんとも地味です。
ブログ映えもしません。
NISAの成功談のような派手さもありません。
でも、60代の男性が本当に書くと、妙に刺さるテーマだと思います。
NISAより先に分けたい“使う予定のあるお金”
60代からの投資で失敗しやすいのは、投資商品そのものよりも、お金の置き場所を間違えることです。
たとえば、退職金の中から300万円をNISAに入れたとします。
値上がりすれば気分はよいです。
配当が入れば、なお嬉しいです。
しかし、その300万円が本当は、今後3年以内に使う予定のお金だったらどうでしょうか。
車検、固定資産税、家の修繕、医療費、旅行、冠婚葬祭。
これらは「いつか使うかもしれないお金」ではなく、「かなり高い確率で出ていくお金」です。
そこを見ないまま投資に回すと、相場が下がったタイミングで現金が必要になります。
すると、安いところで売ることになります。
これは、投資の失敗というより、生活設計の失敗です。
だから私は、退職金を受け取ったら、まず封筒を作ることをすすめたいです。
紙の封筒でもいいです。
銀行口座を分けてもいいです。
家計簿アプリでもいいです。
名前は、こうです。
「税金封筒」
「車検封筒」
「家の修理封筒」
「医療費封筒」
「妻に怒られない封筒」
最後のものが一番大事かもしれません。
この封筒に、先にお金を取り分けておきます。
そのあとで、残ったお金の一部をNISAや定期預金に回すのです。
資産形成というと、どうしても「増やす話」になりがちです。
でも60代からは、減らない仕組みを作ることも立派な資産形成です。
春から初夏へ移る5月16日。
田植え前の水田のように、まずはお金の区画を作る。
どこに何を植えるかを決める前に、水の流れを整える。
それくらいの慎重さが、老後のお金にはちょうどよいのです。
退職金を守っていたのは、証券口座ではなかった
知人に、退職金を受け取ったあと、すぐ投資を始めた男性がいました。
仮に、山口さんとしておきます。
山口さんは65歳で退職し、退職金を受け取りました。
真面目な方で、無駄遣いもしません。
新聞も読み、YouTubeで投資の勉強もしていました。
「銀行に置いておくだけでは増えない」
「インフレに負ける」
「配当金が年金の足しになる」
どれも間違いではありません。
山口さんはNISA口座を開き、配当株と投資信託を買いました。
最初の半年は順調でした。
配当金も入り、通帳を見るのが楽しみになりました。
ところが翌年、家の給湯器が壊れました。
さらに車検が来ました。
固定資産税もありました。
奥様の歯の治療費も重なりました。
「まあ、退職金があるから大丈夫」
そう思っていたのですが、現金部分が思ったより少なくなっていました。
仕方なく、少しだけ投資信託を売りました。
その時期は、ちょうど相場が下がっていた時でした。
山口さんは言いました。
「投資で失敗したというより、現金の段取りで失敗したんです」
この言葉は、重いです。
そして数か月後、山口さんはやり方を変えました。
証券口座を見る時間を減らし、毎年出ていく支払いを紙に書き出しました。
固定資産税。
自動車税。
車検。
火災保険。
医療費。
家電積立。
お墓や法事。
孫のお祝い。
それを月割りにして、毎月少しずつ別口座に移すようにしました。
すると、不思議なことが起きました。
投資の成績は大きく変わっていないのに、山口さんの表情が明るくなったのです。
理由を聞くと、こう言いました。
「株価が下がっても、今年の税金は払えると思えるだけで、こんなに落ち着くとは思いませんでした」
ここが、今回のびっくりする展開です。
山口さんの老後資金を守ったのは、人気の投資信託でも、高配当株でも、退職金特別金利でもありませんでした。
守っていたのは、台所の引き出しに入れた、ただの茶封筒だったのです。
表に、奥様の字でこう書いてありました。
「今年、あわてないお金」
これを見た山口さんは、少し笑って言いました。
「配当金より、この封筒のほうが、よほど心の利回りが高いです」
私はこの言葉を聞いて、60代からのお金の話は、数字だけではないのだと思いました。
もちろん、NISAも大切です。
退職金の預け先を考えることも大切です。
年金制度の変更を知ることも大切です。
けれど、それ以上に大切なのは、暮らしの不安を小さく分けておくことです。
5月の風が少し湿り気を帯び、梅雨の足音が近づく頃。
郵便受けに届く税金の封筒を、ただ嫌なものとして見るのではなく、老後資金の設計図として見る。
そう考えると、資産形成は急に身近になります。
60代からのお金の成功とは、大きく儲けることだけではありません。
朝、新聞を読みながらお茶を飲み、今年の支払いにあわてず、家族に少し優しくできること。
それもまた、立派な利益です。
そして、人生経験を重ねた男性のブログだからこそ、こういう地味な話に深みが出ます。
退職金をどう増やすか。
それも大事です。
でもその前に、退職金をどう慌てずに使うか。
そこにこそ、60代からの本当の資産形成があるのだと思います。
◆>>ユーザーの声「年間利益は平均して300万円くらいです」投資顧問が自信を持ってお届けする推奨10銘柄
