「今月ほとんど金を使ってない」が危険信号だった…梅雨前に読みたい老後の違和感

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「通帳の“空白期間”が老後を壊す」――60代男性が見落としがちな“使わない月”の落とし穴

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六月に入り、朝の散歩道では紫陽花が少しずつ色づき始めました。梅雨前の湿った風を感じながら、私は最近、近所の喫茶店で妙な話を耳にしたのです。

「最近は金を使わないほうが危ないらしいぞ」

最初は何を言っているのかわかりませんでした。老後といえば、“無駄遣いを減らす”“節約する”“年金の範囲で生きる”という話ばかりです。私自身も、60代になってからはコンビニのコーヒー一杯ですら「本当に必要か」と考えるようになりました。

しかし、今じわじわ増えているのは、“お金を使わなさすぎたことで人生のバランスを崩す高齢者”なのだそうです。

しかも問題なのは、本人がその異変にまったく気づいていない点でした。

私はこの話を聞いてから、自分の通帳を何度も見返すようになりました。そして、あることに気づいたのです。

「自分にも、“空白期間”がある」

今日はそんな、“老後の節約では語られない不思議な落とし穴”について書いてみたいと思います。

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「今月、何も買っていない」が続く60代男性たち

退職後、生活は静かになります。

朝は5時に目が覚め、テレビをつける。天気予報を見ながら湯呑みに熱いお茶を注ぎ、妻がまだ寝ている時間に庭を眺める。現役時代には慌ただしく飛び出していた朝も、今は時間だけはたっぷりあります。

ですが、その“時間の多さ”が、逆に財布を閉じさせるのです。

最近は物価高もあり、「なるべく買わない」が癖になっている60代男性は少なくありません。

・昼食は前日の残り
・外食は月1回
・服は数年前のもの
・エアコンも我慢
・趣味も縮小

すると、通帳に変化が出ます。

“お金が減らない”

一見すると理想です。

ですが、実際にはここから体調を崩したり、認知機能が落ちたり、人付き合いが激減するケースが増えているのです。

私の知人に、元公務員の男性がいました。

退職金はしっかりあり、年金も平均以上。投資もせず、堅実に生きていました。しかし、ある時から急激に老け込んだのです。

理由は簡単でした。

「どこにも行かないから」

人は、お金を使わなくなると、行動まで止まります。

行動が止まると、人と会わなくなる。すると、刺激が消える。そして気づけば、“今日が何曜日かわからない生活”になるのです。

実際、私も最近、スーパー以外に出かけた記憶が少なくなりました。

これは節約ではなく、“生活の縮小”だったのかもしれません。

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「年金を減らしたくない」が、逆に損を生む時代

60代男性の多くは、「老後資金を減らしたくない」という気持ちが強いものです。

私もその一人です。

NISAの残高を見るたび、「ここを崩したら終わりだ」と思ってしまいます。配当金が入ると安心し、株価が下がると一日中気分が重い。

ですが最近、“老後は貯めるより、減らし方が難しい”と言われる理由が少しわかってきました。

例えば、身体です。

歯医者を先延ばしにした結果、食事が偏る。すると筋力が落ちる。筋力が落ちると外出が減る。そしてさらに身体が衰える。

最初は「数千円を節約しただけ」のつもりなのです。

ところが、その数千円が、数年後には介護リスクに変わる。

実は今、高齢男性に多いのが、“軽い栄養失調”だそうです。

意外かもしれませんが、原因は“食べない”ではなく、“単調なものしか食べない”ことです。

私も最近、昼はうどん、夜は納豆ご飯で終わる日があります。

若い頃は平気だったのですが、60代になると露骨に体力に出ます。

六月の蒸し暑い夜、エアコン代を気にして扇風機だけで寝た翌朝などは、本当に身体が重い。

「老後資金を守る」という行為が、いつの間にか“自分自身を削る行為”に変わっている場合があるのです。

そして厄介なのは、真面目な人ほど、その状態に陥りやすいことです。

節約できる人ほど、自分を後回しにするからです。

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私が最後に使った“大きなお金”の意外な結末

ここで、少し恥ずかしい話をします。

私は去年、“人生最後の贅沢”のつもりで、思い切って温泉旅行を予約しました。

一泊二日。瀬戸内海が見える小さな宿でした。

正直、予約ボタンを押したあと、何度も後悔しました。

「2万円あれば何日食べられるんだ」
「こんな年で旅行してどうする」

そう思いながら出発したのです。

ところが、旅館に着いてから、妙なことが起きました。

久しぶりに、人と話したのです。

宿の仲居さんと世間話をし、露天風呂で同年代の男性と野球の話をした。夕食では、鯛の煮付けを食べながら、「うまい」と声が出た。

その瞬間、私は気づきました。

“自分は、もう何年も感情を動かしていなかった”

のです。

帰宅後、不思議なくらい体調が良くなりました。

歩く気力も戻り、朝の散歩距離まで伸びました。

そして、ここからが今日いちばん書きたかった話です。

その旅行の帰り道、私はサービスエリアで偶然、中学時代の同級生と再会したのです。

実に45年ぶりでした。

相手は私を見るなり、「お前、生きてたのか!」と笑いました。

そして、その流れで月に一度、昔の仲間と集まるようになったのです。

つまり――

私の“老後最大の資産形成”は、NISAでも高配当株でもありませんでした。

たった2万円の旅行で、“人間関係”が戻ったことだったのです。

あれほど「使ったら減る」と思っていたお金が、実際には人生を広げていました。

これには、自分でも驚きました。

もちろん無駄遣いはいけません。

ですが、60代から本当に怖いのは、“お金が減ること”ではなく、“人生の動きが止まること”なのかもしれません。

最近、私は月に一度だけ、「意味のない出費」を作るようにしています。

少し高い蕎麦でもいい。古本屋でもいい。電車に乗って海を見るだけでもいい。

すると、不思議と次の日の気分が違うのです。

老後とは、“残高を守る戦い”だと思っていました。

ですが今は少しだけ考えが変わりました。

本当に守るべきなのは、“通帳”ではなく、“自分がまだ人間らしく笑える感覚”なのかもしれません。

今年の梅雨も、もうすぐ始まります。

じめじめした季節は、気持ちまで内側に閉じこもりがちです。

だからこそ、財布ではなく、“心”が縮こまっていないか。

私は最近、そちらのほうを気にするようになりました。

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