夏の伝統行事を知ると、人生がもっと豊かになる

「夏の行事」と聞いて、どんな思い出がよみがえりますか?子どもたちと線香花火をした夜、盆踊りのやぐらの明かり、縁側で聴いた虫の音…。
私は60歳を迎え、こうした季節の行事が、年々心にしみるようになってきました。
日々の忙しさに追われていると、「なんとなく」過ごしてしまいがちな日本の伝統行事。でも、その由来や意味を知り、自分なりの過ごし方を考えると、人生が少しだけ豊かに感じられる気がします。
今回は、お盆など夏の代表的な伝統行事や、秋の訪れを感じる酉の市までをじっくりと紐解きながら、大人世代だからこそ楽しめる過ごし方やヒントをお伝えします。
お盆の由来と本当の意味
- 祖先を迎えるための大切な行事
- 「盆」の語源は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」
- 家族や親族が集い、心を寄せ合う機会
お盆は、言わずと知れた夏の一大イベントです。8月13日から16日が一般的ですが、地域によっては7月や旧暦で行うことも。
そもそも「お盆」とは、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が語源。これは仏教の教えに由来し、ご先祖様の霊を迎えて供養し、感謝の気持ちを伝える行事です。
私は子どもの頃、お墓参りをした後に親族一同で食卓を囲み、昔話に花が咲いたものです。現代では家族の形も多様化していますが、「亡き人に思いをはせる時間」を持つことが、どんな時代でも大切なのだと感じます。
精霊流し・迎え火と送り火の意味
- ご先祖様を迎える「迎え火」
- 「送り火」で霊を送り返す
- 各地で見られる精霊流しの風習
お盆には、玄関先で「迎え火」を焚く家庭も少なくありません。火を焚くことで、ご先祖様が迷わず帰ってこられるようにという思いが込められています。
最終日には「送り火」で霊を送り返す…。私も昔、子どもたちと一緒に小さな松明に火を灯し、「また来年もおいで」と声をかけたことがあります。
また、長崎の精霊流しなどは全国的にも有名ですね。川や海に灯篭や精霊舟を流し、霊をあの世へと送る――。幻想的な光景は、「命のつながり」を感じさせてくれます。
現代の住宅事情では難しいこともありますが、小さなロウソクやLEDライトで雰囲気を出すのもおすすめです。
盆踊りの由来と楽しみ方

- 鎮魂・供養のための踊り
- 地域色豊かな振付や衣装
- 「踊ることで心が一つになる」体験
夏の夜といえば盆踊り。
その歴史は古く、平安時代の「念仏踊り」から始まったと言われています。もともとは、ご先祖様への供養や鎮魂が目的。今では町内や自治会で開催され、老若男女が輪になって踊る姿は日本の原風景です。
私も若いころ、浴衣姿で汗だくになりながら踊った思い出があります。恥ずかしがらずに飛び込んでみると、不思議と心が解放されます。
「知らない人とも、気づけば笑顔で手を取り合っていた」そんな体験ができるのが盆踊りの魅力。
今年はぜひ、一曲だけでも参加してみてはいかがでしょうか?
夏祭りの意義と地域の絆
- 五穀豊穣や厄除けを願う行事
- 子どもも大人も楽しめる
- 地域の人と交流できる絶好のチャンス
各地で開かれる夏祭り。
「なぜ夏に多いの?」と聞かれることがありますが、稲作の成長を祈願する「田の神様」をまつる意味が強いからです。また、夏は疫病が流行りやすかったため、「厄除け」「無病息災」も祈ってきました。
子どもたちがヨーヨー釣りや金魚すくいに夢中になる横で、私たち世代は地元の顔なじみとゆっくり話す――。
普段はなかなか顔を合わせる機会が減ってきましたが、こうした祭りが「地域の絆」を深めるきっかけになるのです。
コロナ禍で中止が続いた分、今年は特に待ち遠しいという方も多いのではないでしょうか。
お中元と夏のご挨拶
- 感謝の気持ちを贈る日本の美しい習慣
- 地域や家庭で異なる贈る時期
- 最近はカジュアルギフトも増加
お中元は、昔から「お世話になった方に感謝を伝える」大切な習慣です。
関東では6月下旬から7月中旬、関西では7月中旬から8月15日ごろまでが一般的。
以前は「きっちりした贈答品」が主流でしたが、最近は気軽なプチギフトやオンラインでのやり取りも増えています。
私は数年前、友人から手作りのジャムと一筆箋が届いたとき、心が温まりました。
形にこだわりすぎず、「相手を思う気持ち」を大切にすることが、今の時代らしいお中元のカタチかもしれませんね。
酉の市の由来と2025年の開催日
- 商売繁盛・開運祈願の祭り
- 2025年は「三の酉」まで開催
- 開催日は11月5日・17日・29日(2025年)
秋の深まりとともに訪れる酉の市。
江戸時代から続くこの行事は、毎年11月の「酉の日」に各地の大鳥神社や鷲神社などで開かれます。
2025年は、11月5日(水)・17日(月)・29日(土)と三回。「三の酉」まである年は、火事が多いという俗説も。
酉の市といえば、威勢のいい掛け声とともに「熊手」を買い求める光景が名物ですね。「今年も元気に一年を!」と願う場として、私も毎年足を運んでいます。
【表1】2025年 酉の市開催日カレンダー
酉の市 | 開催日 | 曜日 |
---|---|---|
一の酉 | 11月5日 | 水 |
二の酉 | 11月17日 | 月 |
三の酉 | 11月29日 | 土 |
熊手の縁起と正しい選び方
- 「運をかき集める」縁起物
- 大きさより「気持ち」が大切
- 購入の際は「三本締め」が習わし
酉の市の主役といえば「熊手」。
熊手は「運をかき集める」「福を招く」という意味合いがあります。初めて買うときは小さなものから、商売を続けるごとに少しずつ大きなものに変えていくのが良いとされています。
でも私が思うに、大切なのは「値段」や「大きさ」よりも、その年の自分や家族への「思い」。店先で、威勢の良い「三本締め」で送り出してもらうと、自然と背筋が伸びるような気持ちになりますよ。
酉の市の楽しみ方と屋台グルメ

- 昼から夜まで賑わう屋台
- 縁起物や地元グルメがずらり
- 「ちょっと一杯」も醍醐味
酉の市の魅力は、熊手だけではありません。
境内には、たこ焼き・お好み焼き・焼き鳥・甘酒など、地元ならではの屋台グルメがずらり。
私は「毎年必ず食べるものを決めている」なんていう楽しみ方をしています。普段はなかなか食べない懐かしい味、にぎやかな雰囲気でいただく一杯――これこそが、季節を五感で味わう喜びです。
家族や友人と訪れるのはもちろん、一人でふらりと出かけるのもまた良し。気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
夏の伝統行事を今の暮らしに生かすコツ
- 小さな「行事」を自宅で楽しむ
- 子どもや孫世代と一緒に体験をシェア
- 時代に合った新しい楽しみ方を探る
伝統行事というと、なんとなく**「敷居が高い」「面倒」と思いがちです。
でも、大切なのは「完璧にやる」ことではなく、「少しだけ意識してみる」こと。
私も最近は、玄関に小さな提灯を飾ったり、夏には手作りの団扇を作ってみたり――。孫と一緒に昔の遊びを体験することで、新しい発見もありました。
今は便利なアイテムやサービスも増えています。時代の変化に合わせて、自分なりの楽しみ方を見つけるのもまた、人生の醍醐味ですね。
行事を続ける意味と心の豊かさ
- 日本人ならではの「心」を育む
- 日々の生活に小さなハレの日を
- 思い出が「生きる力」になる
なぜ、行事を大切にするのか――
私が思うに、それは「今を生きる自分と、過去・未来をつなぐ大切な糸」だからです。
行事を通して、ご先祖様への感謝を伝えたり、地域の人々とふれあったり。
たとえ規模が小さくなったとしても、「今日はちょっと特別な日だ」と意識するだけで、心が豊かになります。
60代を迎えて思うのは、「毎年の行事が、人生のアルバムにそっと色を足してくれる」ということ。
皆さんも、「今年は何をしてみようか」と、小さなチャレンジを楽しんでみませんか?
【グラフ】伝統行事への参加率と世代別意識
下記のグラフは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」をもとに、伝統行事への参加率(世代別)の推移を示しています。
plaintextコピーする編集する 80% ┤
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70% ┤■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
60% ┤■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
50% ┤■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
40% ┤■■■■■■■■■■■■■■■
30% ┤■■■■■■■■■■■
│
┌─────────────┬──────────────┬──────────────┐
│ 60代以上 │ 40~59代 │ 20~39代 │
└─────────────┴──────────────┴──────────────┘
(例:60代以上70%、40~59代60%、20~39代45%)
データから見ると、60代以上は伝統行事への参加率が最も高く、次いで40~59代。若い世代ほど減少傾向ですが、「子や孫と一緒に体験したい」という声も増えています。
これからも、私たちの世代が「橋渡し役」となって、行事の楽しさや大切さを伝えていきたいものですね。
まとめ:日本の伝統行事を「今」に生かす
長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
お盆や酉の市など、夏から秋にかけての伝統行事には、日本ならではの心づかいと知恵が詰まっています。
「昔はよくやっていたけど、今はなかなか…」という方も、小さな一歩から再スタートしてみませんか?
ご先祖様を思う、家族と語り合う、友人と祭りを楽しむ――そのひとつひとつが、きっと心に残るはずです。
あなたにとって、この夏・秋はどんな“ハレの日”にしたいですか?
ぜひ、今日からできる「伝統行事の楽しみ方」を見つけてみてください。


